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特別なお菓子と共に

 大変遺憾である。大変、遺憾である。大事なことなのでつい繰り返してしまうが改めて言おう。大変遺憾である。

 何がこんなに腹立たしいかといえば、我が物顔でオロルンの肩に乗り、フードの中で一息ついているモモンガに対してである。ケネパベリーが食べたいからももちろんあるからだろうが、雰囲気でわかるのだ。あれは、オロルンだから乗っているのだと。

 イクトミ仔竜に意識を移しているためこちらの視界はイクトミ仔竜に準ずる。足元で見上げるしかないのを理解しているのだろう。見下ろしてくる視線が腹立たしいことこの上ない。俺のオロルンだが?(別に決まってはいない) 

「ん?どうしたんだスーラ、君もケネパベリーが欲しいのか」
クルル…(別に)
 大人げないのは理解している。少しだけオロルンの困惑した気配が伝わってきた。
「はい、スーラ」
 高い背を小さくしゃがみこませ、スラーインと目を合わせようとする。その際にバランスを崩したのか、モモンガは肩から飛び立っていった。ざまあみろと思わずモモンガを視線で追っていると、口に何かが押し付けられた。

「これはちび竜ビスケットにミツやチョコレートをかけたものだ。昨日作っていたんだが、君は寝ていただろう?」
 知らなかった。イクトミ仔竜の体はやはり仔供なだけあって疲れて寝てしまうことが度々あるのだ。
「ケネパベリーはモモンガと相談して決めてもらうし僕は誰の肩も持たない。だけどこれは君へのプレゼント。特別にな」
 (オロルン……)ビスケットを手に持ちじーんと感動しているとグイっと持ち上げられた。


「モモンガみたいに肩にはのせてあげられないが、こうして一緒に歩くことはできる。ビスケットはまだあるが早い者勝ちだからな。誰に出会うか楽しみながら、散歩に行こう」
クルル!(あぁ)

 なお、オロルンに抱えられたイクトミ仔竜からビスケットを手渡しされたホワイトデーは巷で話題になったそうだ。

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