お菓子を共に
「よし、準備はいいか、スーラ」
クルル(ああ)
この日、オロルンの家の中では一人と一匹がエプロンを身に着け、気合を入れてとある材料の前で立っていた。
そう、世間でいうバレンタインデーである。
オロルンは日ごろの感謝を伝えたいとバレンタインデーなるものを知ると様々な準備を行った。
チョコの原料を集め、レシピを調べ、器具を集めた。
フォンテーヌまで行きシェフにチョコレートの作り方を学んできたのだから間違いはない。
問題はオロルンの家で再現ができるか、それに尽きる。
イクトミ竜に意識を移したスラーインはそのオロルンの努力を間近で見てきた。そしてどのタイミングならこのイクトミ竜の幼体の体で手伝えるかまできちんと計算している。抜かりはないスラーインだ。
「これでよし。スーラ、ちょっと持っててくれよ、うん、その調子だ」
「スーラ、少し冷やしたいから氷をあててくれないか」
「うん、これでオーブンに入れて焼いたら完成だ!」
クルル!(そうだな)
紆余曲折を経て完成したチョコレート菓子。さすがに菓子職人ほどの完成度はないが、一人と一匹の共同作業となれば十分及第点だろう。
「あとは袋詰めだな。スーラ、一緒にやろう。袋を開けていてほしい」
クル!(任せろ)
スラーインが小袋の口を開けて持っているところに、フィルムで包んだチョコ菓子をポイポイと入れていく。最後オロルンが口を結んで完成だ。
「たくさんできたな、スーラ。明日はこれをみんなに渡しにいこう」
クルル(ああ。喜んでくれるといいな)
オロルンとスラーインの共同作業によって作られたチョコ菓子は甘くておいしいと評判であった。
(これは君に)
とある玉座で眠る男の膝の上には、他よりもきれいにラッピングされたお菓子が置かれていた。

